ご挨拶

日本顕微鏡学会第74回学術講演会の開催にあたって

公益社団法人日本顕微鏡学会会長 牛木 辰男

第74回学術講演会実行委員長 中村桂一郎

 2018年5月、九州の久留米市で第74回日本顕微鏡学会総会・学術講演会を開催することとなりました。九州で開催された学術講演会は、21世紀になって最初の第57回大会(2001年)、そして最近では、第67回大会(2011年)がありますが、会場はいずれも福岡市でした。久留米市での開催は今回が初めてとなりますが、九州一円の材料系・生物系関係者一同が一丸となってお世話させていただきます。

さて最近、国内外の関連学会や学術雑誌ではmulti-scale, multi-dimension, multi-modalという用語を頻繁に目にします。本学会のこれまでのテーマからは、材料系、生物系とも各分野の先鋭的発展とそれらの融合を基盤とする大きな変化が伺え、それらを起爆剤とした新展開が期待されています。今回はさらに一歩進めて顕微解析 イメージングのシンギュラリティをテーマとしたいと考えました。シンギュラリティという用語は、もともとコンピュータサイエンス分野において機械学習、ラージスケールデータ、ディープラーニング、そしてAI(人工知能)の発展に伴う「計算機が人類の能力を超える技術的特異点」として用いられたものです。囲碁・将棋はもとより、ネット検索のフィルタリングや、最近話題となったAIによる医療診断・治療はシンギュラリティが近づいていることを予感させます。AIはそもそも画像解析分野で生まれたと聞きます。イメージングの世界も大きな転換点を迎えていると捉えることはできないでしょうか?

昨今、様々な分野の融合が有用であることが強調されてきました。本学会は材料系分野と医・生物学系分野の交流から、多くの発展のきっかけを作りだしてきました。車の両輪にもたとえられる産業界と学際の積極的な連携なしには今日の発展はなかったかも知れません。また、国内外の他学会との連携も積極的に進める必要があります。顕微解析・イメージングと不可分である本学会の近未来の飛躍を期待して、また、今回の学術集会が現状の変化を共有し、さらなる進歩に向けて、研究者ばかりでなくメーカーの皆さまが集い、情報交換・交流の場となって、新しい技術的転換につながるような会をめざします。

久留米市は、九州新幹線が開通して、福岡市の博多駅から17分、また、西鉄特急電車で福岡天神から30分と福岡市からとても近い距離にあります。しかしながら背振山系を一山越えた、筑後川流れる筑後平野の風景は大きく異なります。高速道路やJRの交差点である鳥栖市に隣接し、熊本、佐賀、長崎はもちろん、九州一円どこにもアクセスし易い位置にあります。太宰府や柳川、吉野ヶ里にも近く、市内にも水天宮本社や梅林寺などの名所旧跡も多く、会期中には久留米ツツジや藤棚など、学術的交流の合間のひとときを癒すこともできるに違いありません。国内外の会員のみならず、非会員でも顕微鏡に関わる研究者、技術者、学生などの多様な皆様、さらに関連学界や産業界をはじめとする幅広い皆様が興味を持たれ、“ほとめきの街” 久留米での学会にご参加くださいますよう、実行委員ならびに学会関係者一同、心よりお待ち申し上げます。